角膜の傷がもたらす影響

1.角膜の傷がもたらす更なる疾病

角膜の細胞が欠損する角膜上皮障害

角膜上皮の再生修復が追いつかなくなると、細胞のない部分が生じてしまいます。すると、涙がとまらなくなったり、痛みが出たり、また、目やにや充血が見られたり、ひどい場合には角膜に濁りが出て、まぶしさや視力低下につながることもあります。角膜上皮障害には次のようなものがあります。

点状表層角膜症(SPK)

点状表層角膜症 点状表層角膜症

角膜上皮最表面で欠損が生じ、表面がでこぼこになってしまう。原因はドライアイやアレルギーなどさまざま。

角膜びらん

角膜びらん 角膜びらん

角膜上皮層すべてが欠損してしまう。単純性角膜びらんのほか、繰り返し起こる再発性角膜びらんがある。深く傷つくと症状が再発しやすい。

遅延性角膜上皮欠損

遅延性角膜上皮欠損 遅延性角膜上皮欠損

角膜の修復機能の異常で角膜上皮の欠損が長引く。
(1週間~10日程度治らない状態が続く)

▼点状表層角膜症(SPK)
点状表層角膜症(SPK) 点状表層角膜症(SPK)
▼単純性角膜びらん
単純性角膜びらん 単純性角膜びらん
※傷の部分を染めた目。細胞がはがれたところが光っている
▼角膜上皮欠損
角膜上皮欠損 角膜上皮欠損

写真出典:「東邦大学医療センター大森病院眼科」

バリア機能の低下から角膜炎へ

バリア機能の低下から角膜炎へ バリア機能の低下から角膜炎へ

角膜上皮は細菌やアメーバの侵入を防ぐバリアとして機能しています。細胞同士がしっかりと組み合わさって、異物が内部へ侵入していくのを防いでいるのです。ところが、角膜上皮細胞に欠損が生じると、そこから細菌やアメーバが侵入していきます。角膜上皮の内側にある角膜実質は自己修復機能が弱いため、傷が入ると治りにくく、さらに内側の角膜内皮は一度傷つくと元には戻りません。角膜内皮は角膜上皮の傷はほんの小さなものだったとしても、そこから細菌の侵入を許してしまうと、角膜にとっては大きな危機になるのです。治療によって細菌やアメーバを排除しても、傷跡や濁りが残ると、レンズの透明性が失われるため、ものを見るのに支障が出ます。

目が緑になる?さらに怖い角膜感染症

おもな角膜感染症には、次のようなものがあります。

細菌性角膜感染症

細菌性角膜炎 細菌性角膜炎
細菌性角膜炎
写真出典:「東邦大学医療センター大森病院眼科」

角膜や結膜の表面に存在する細菌が入り込むことにより、起こる。眼球内にうみがたまったり、虹彩に炎症が起きたりする。

角膜真菌症

真菌性角膜炎 真菌性角膜炎
真菌性角膜炎
写真出典:「東邦大学医療センター大森病院眼科」

真菌、いわゆるカビへの感染です。治るのに時間がかかります。

アメーバ角膜炎

ソフトコンタクトレンズの不適切な使用などで感染するもので、近年、増加傾向が見られます。



ほかに角膜ヘルペスや、角膜実質まで細菌に侵される角膜潰瘍などもあります。これらの感染症を深刻化させるのがコンタクトレンズの不適切な使用です。1日使い捨てレンズを数日間使ったことで角膜炎を発症し、角膜を移植しても治らず、最終的に眼球摘出になった症例も報告されています。



見えづらさが認知症へ発展する可能性も

角膜の小さな傷を放置すると・・・

ほんの小さな傷でも、角膜上皮障害を放置しておくと感染症にかかりやすくなり、場合によっては失明してしまうことさえある―これだけでも深刻な問題ではありますが、実は、視覚障害が脳や全身の疾患へと発展していくこともあります。
角膜が損傷すると、目の中で光が散乱して、うまく像を結べなくなります。これは強いまぶしさとして自覚されます。目に入ってきた映像が正確に再現されないと、何が映っているのかを判断しにくいため、脳のなかでの情報処理にも時間がかかります。これは脳神経にとって大きな負担です。
見えにくいことによって、心理的なストレスも生じます。角膜損傷やドライアイと鬱病の発症には相関関係があるとも言われています。おそらく、見えづらいことによる不快感が関係しているのでしょう。