角膜ケア方法

3.細胞の増殖力を高める:ビタミンAの効果

今、美容で話題のビタミンA(レチノール)

「深いシワまで改善してくれる」と、今話題の美容成分があります。
ビタミンAです。
深いシワの原因のひとつは、肌のうるおい不足です。ターンオーバーが乱れ、保水できなくなってしまった皮膚の状態を改善するには、水分を補うとともに、硬くなってしまった皮膚をやわらかくして、うるおいを保てるようにする必要があります。
うるおいを保つためにはヒアルロン酸が欠かせません。ヒアルロン酸はもともとヒトの身体のなかでつくられている成分ですが、年齢とともにつくれる量が減っていきます。不足する場合には外から補うこともできるため、身近な化粧品や健康食品、医薬品にも使われています。ビタミンAが注目されているのは、このヒアルロン酸をつくりだすように、細胞に働きかけることができるからです。ビタミンAが配合された化粧品は、一時的にうるおいをプラスするのではなく、ターンオーバーを回復させ、根本から肌のうるおいを取り戻してくれます。そのため、今まではあきらめていた深いシワも改善できると期待されているのです。

ビタミンA(レチノール)の角膜での働き

ビタミンAのヒアルロン酸産生作用

ビタミンAは、眼でも同じように、ヒアルロン酸がつくられるよう、細胞に働きかけます(ヒアルロン酸産生)。ヒアルロン酸が角膜上皮細胞の成長を促し、角膜の修復を促進します。
実際に、実験でもそのような結果が出ています。ウサギの角膜上皮細胞に濃度が異なるビタミンAを加えてみたところ、濃度の高いビタミンAを加えた方が、濃度の低いビタミンAを加えた方よりも、ヒアルロン酸が多くできていることが分かりました。

ビタミンA(レチノール)の角膜での働き ビタミンA(レチノール)の角膜での働き

ビタミンA(レチノール)の傷の修復効果(ウサギ)

ビタミンAはヒアルロン酸産生を促し、角膜上皮の再生を促すとともに、涙を目の表面にとどめるムチンの分泌も促します。これによって、傷の修復効果も高まります。
ビタミンAを目に入れると、角膜の傷は修復されるのか、実際に確かめた実験もあります。角膜上皮に傷をつけてドライアイの状態にしたウサギにビタミンA配合の目薬を差し、3日後と1週間後に傷の治り具合を確かめるというものです。傷の修復効果は、角膜の傷の度合いを表すフルオレセインスコアで評価されました。この数値は小さいほど、傷が少ない=修復されたということを意味しています。
下に示す表が、フルオレセインスコアの変化です。1週間後には傷がないことを意味するゼロ近くまでスコアが下がっており、傷がほぼ修復されたことが分かります。

ビタミンA配合目薬の効果

ビタミンAが持つ、傷の修復効果がわかる実験がもうひとつあります。傷つけた角膜上皮細胞にビタミンAを加えた場合と加えなかった場合で、それぞれどのような経過をたどるかを観察したものです。
丸2日経つと、ビタミンAありの方では細胞の成長が促され、傷が埋まりましたが、ビタミンAなしの、もともと備わっている回復力で経過を見た方は十分に治りきりませんでした。

傷つけた角膜上皮細胞にビタミンAを加えた場合と加えなかった場合で、それぞれどのような経過をたどるかを観察 傷つけた角膜上皮細胞にビタミンAを加えた場合と加えなかった場合で、それぞれどのような経過をたどるかを観察
傷つけた角膜上皮細胞にビタミンAを加えた場合と加えなかった場合で、それぞれどのような経過をたどるかを観察 傷つけた角膜上皮細胞にビタミンAを加えた場合と加えなかった場合で、それぞれどのような経過をたどるかを観察
傷つけた角膜上皮細胞にビタミンAを加えた場合と加えなかった場合で、それぞれどのような経過をたどるかを観察 傷つけた角膜上皮細胞にビタミンAを加えた場合と加えなかった場合で、それぞれどのような経過をたどるかを観察

ビタミンA(レチノール)の傷の修復効果(ヒト)

ビタミンA配合の目薬の有効性を評価するための治験も行われています。その結果報告によると、ビタミンA配合の目薬を使ったグループとビタミンAの入っていない目薬(プラセボ)を使ったグループでは1ヶ月後に差がでました。
目の傷つき度合いを測る指標に、傷の部分が染まる試薬を使って、どのぐらい染まったかを見て評価者が点数をつける「フルオレセイン染色スコア(角膜上皮の傷つき度合い)」と「ローズベンガルスコア(角膜上皮と結膜上皮のムチン欠損度合い)」があります。どちらも点数が高いほど傷ついていることを表し、点数が下がっていくほど傷が修復されていることになります。目薬を使った後の傷の経過を調べたところ、ビタミンA配合の目薬を使ったグループとプラセボを使ったグループの間で、1ヶ月後にはいずれの染色スコアにも差が認められました。
また、被験者本人にも「目のかすみ」など12項目の自覚症状について、その症状の程度を尋ねて点数をつけてもらったところ、ビタミンA配合の目薬を使用していたグループの方が、プラセボを使ったグループよりも症状が改善している傾向にあり、特に「目のかすみ」と「総合スコア」では、目薬を差してから1週間後に有意な差が認められました。

染色スコアの平均変化量の推移

フルオレセイン染色スコア
ローズベンガル染色スコア

出典:“Efficacy and safety of retinol palmitate ophthalmic solution in the treatment of dry eye: a Japanese Phase IIclinical trial”,  Drug Design, Development and Therapy,2017.11, p1871-1879

上記のヒト試験では、ビタミンA配合の目薬を使ったグループフルオレセイン染色スコアが9点から2点に改善した対象者もいました。
一般的な症例に当てはめると、下記のような傷の程度に相当します。

角膜上皮障害スコア9点の症例 角膜上皮障害スコア9点の症例
角膜上皮障害スコア2点の症例 角膜上皮障害スコア2点の症例

写真出典:杏林大学医学部・杏林アイセンター